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「返したんだよね?」

そう言って会っていきなり胸倉を掴まれた。

あぁ……なんでこんな状況になってんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…桜……ちょ、くるし…っ!!」

ぐぐっと胸倉を掴まれた状態で足が宙に浮く。

嘘だろ?

俺こいつより背高いし、体重だってあるはずなんだけど…


「ちょ、マジで離せってっ…く・くるしっ……」

そう言って体をバタつかせると、桜は小さく舌打ちをして俺のシャツから手を離した。


…ってか何でこんなに機嫌悪ぃんだ…?


そんなことを考えてると桜は冷たい声で

「ねぇ…流風さん。今日何日かわかる?」

と言いだした。


「は・はぁ??」


何の脈絡のない質問に思わずそう返してしまう。


「知らなかった?3月の25日だよ。」

「え…いや、それくらい知ってるけど…」

「……もう一週間以上過ぎてんだよ?」


もうなんのことだかわかんねぇ……


とりあえず何かしらこいつらが怒ってるってことは理解できた。

桜の後ろで菫もすっげぇ俺のこと睨んでるし…


「な・なにが…っ?」

考えても答えが出る気がしなかったので素直にそう尋ねる。

すると桜はにこっと笑って答えた


「ホワイトデーからですよ」

ただ額には青筋が浮かんでいたけれど。

 

「は?ほ・ほわいとでぇ??」

「なに?まさか知らないとは言わないですよね?夢さんにはちゃんとお返ししてるもんね?」

「や、一応前に准平に聞いて知ってるけど………ってか何で夢にあげたこと知ってんだよ!?」

「今はそんなこと聞いてません。」

「す・菫……さっきから微妙に靴の先で踵蹴るのやめろ!地味に痛ぇ!!」

「あぁ…すいません。母さんからチョコ貰っておいてお返しもしないなんて人神経が通ってないのかと思いまして。」

「……暗に無神経だと言いたいのか?」

「暗にじゃなくてはっきりと行ったつもりなんですけど?」

 

菫は桜と同じようににこっと笑う。

あぁ…やっぱこいつら双子だな……怒ったときの笑いかたまでそっくりだ…

 

 


つまり…こいつらの話をまとめると…先月のバレンタインに俺が緋粋さんからチョコを貰っておきながら、何故お返しをしねぇんだ!!

ということらしい……

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつらマジでマザコンだな…。

 

 

「流風さん?今何か考えてた?」

「え…いや、別に。」

 

というか…緋粋さんに確かに貰ったけど…なんというか、あれは同情でくれたみたいなもんだし…

あぁいうのにお返しっているのか??


ってか俺このバレンタインデーとホワイトデーっていう行事を知ったのが最近だからいまいちよくわかんねーんだけど……

ホワイトデーは貰ったやつ全員に返さないといけないのか…?  だったら他にも返してねーやついっぱいいる……

ってかこれって好きなやつにチョコとかやる行事なんだろ?

じゃあ別に好きじゃないやつには男だってお返ししなくてもいいんじゃねーのか…???


ってかこれで俺がお返しして茉珱さんとかに睨まれたら嫌だし…

 


というのが俺の考えでお返しをしなかった。


それを双子に伝えると

 

「「………」」

 

何故か蔑んだような目で見られた……。

 

 

 

 

×××

「ってぇ……んで、いきなり俺がボコられなきゃいけないんだよ…」

「流風さんが母さんを蔑ろにするからでしょ!!」

「待て…何かその言い方は誤解を与えるからやめろ!!」


あの後、とりあえず一発ずつは殴らせてください。という理不尽な要求……要求っていうか、そう言った瞬間に殴られた……


「で?何?緋粋さんも怒ってんの?」

それならちゃんと謝りに行ったほうがいいのかもしれない…

あの人が怒るといろいろややこしそうだ……主にその周囲が。現にこいつらが来てるわけだし…


「え?いいえ、母さんは怒ってませんよ?」

「は?」

「ってか母さんが流風さん如きにお返し貰えなかったからって怒るような小さい人間なわけないじゃん。」

「……………は??」


え?

じゃあ何で俺こんな目にあってんだ??

 

「「単に俺らが気に入らなかっただけ」」

 

驚くほど綺麗にハモって双子はそう言った。

 

「母さんがせっかく流風さんのためにお菓子作ったってのにさー、お返ししないとか母さんが許しても俺らが許せないよね、菫ちゃん!」

「そうだな。」


「「ってことで」」


ガシっと両腕を双子に掴まれ持ち上げられる。


「今からお返し買いに行きましょうか!」

「ホワイトデーの時に3倍返しなんだから今は10倍返しくらいにしないと割にあわないよねー」

「は?…はぁ??」


こうして俺はお返しという名のカツアゲにあった……

 


教訓:浅葱家に物を貰うときは(特に緋粋さん)お返しに気をつけよう。

 

 

 

 

 


◆◆◆
ホワイトデーから一週間以上経ってしまいましたが、ホワイトデーSSSです!!
安心の龍くん不憫率ですね(笑)

トオルさんのとこの緋粋ちゃんから夢から貰えなかった時用にチョコを貰ってたのでそのお返し話です。
龍は変なとこで世間知らずなのでホワイトデーをちゃんと理解してなくて、ホワイトデーも好きな子にしか返さなくていいと思ってたんですよ。
ので、夢にはちゃんとお返ししました。
夢からは貰ったんだと思うよ。顔面に投げられて(笑)
ちなみに夢は双子と茉珱さんにもあげてると思います。

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注意!
前回同様「恋の一雫」の番外編です。
主役の2人がもう恋人同士なんで注意してください!

あとちょっと変態っぽいとこがありますけど(ってか変態さんがいるけど)…ご了承ください。





























俺は最近気づいたことがある。

 

 

 

 

 

ガタンゴトン…と規則的な音をさせて大きな箱が移動する。

所詮は電車というやつだ。

電車通学の雫は当然毎日それに乗って学校へ行き、それに乗って家へ帰る。


そんな日常的な風景にたびたび非日常的なことが起きる。

 


(いた…。)

 


菫は電車に乗っている雫の姿を見つける。

普通なら声をかけるのだが……如何せん俺の彼女は見てて飽きない。

何もないところでは転ぶし、透明なガラスに突っ込んでみたり、雨の日にマンホールの蓋で滑ってみたり……挙げたらキリがないくらい。


そんな性格の彼女を電車の中でとりあえず観察すること早数回。

 

高確率で起こることそれは……

 

 

(あぁ……また。)


雫の背後に少し歳がいった男性が立つ。

そしてそろり……とスカートの上に手を置き。円を描くように回し始める。

心なしか息遣いも荒くなってきた。

 

 

これは世間一般でいう……痴漢ってやつなんだろう。

 
普通ならきっと泣きそうになったり、離れたりなんらかのアクションを起こすのに…雫はそれをしない。

ただ普通にしている。




だから俺は少し意地悪でこんな質問をしてみたんだ。

 

 

 

 

 


「ねぇ、あれはさ。趣味なの?」

「へ?」

突然菫が雫に問いかける。

当然雫は全くなんのことがわからず頭の上にクエスチョンマークが飛ぶ。

 

「だからさ……よく電車でやってる(やられてる)あれ。趣味なの?」

「電車?」

「そう。乗ってるでしょ?」

「そう…だねぇ。電車には毎日乗ってるけど……何で知ってるの?」

「いや、今そこはいいんだよ。」

「…そうなの?」

「うん。」

「??」

よく意味のわからないまま雫は頷く。

そして雫は菫の言ってる意味について考えてみる。

 


電車でやってる趣味??

毎日電車に乗ってるけど……趣味と言えるようなことはやってな……


あ……あぁー!!

 


「で?どうなの?」

菫は再び問いかけると雫は嬉しそうな顔をして答えた。

「そう!趣味なの!!とってもおもしろいんだよ!!」

「……………………え?」

「なんていうのかな…ロマンが詰まってるっていうかね!!時には激しく時にはスリルもあり……もうやめられないの!!」

「………………」

「今度菫くんもどう!?きっと夢中になるよ!!」

「…………」


「菫くん??」

「い・いや……遠慮しとく。」

「そう??面白いのに。」

 

 

 

知らなかった……

俺の彼女ってそういう趣味だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ。

「ねー夕姫ちゃん!聞いて聞いて!!今日ね菫くんが私の趣味に興味持ってくれたの!!」

「趣味って……読書のこと?」

「そうなの!私毎朝電車で読んでるんだけど…それを菫くんが興味持ってくれてね!!聞いてきてくれたの!!」

「そっか~!しーちゃん好きだもんねー。本とか。しかもハードカバーなやつ。」

「うん!!だって面白いでしょ?」

「えー…あーーーうん。私はどっちかっていうと体動かすほうが好きだからなぁ~」

「そっかぁ…。また興味が出たら言ってね!おすすめ貸してあげるよ!」

「ありがとー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


◆◆◆
本編更新せずに番外編ばっかですいません。
とりあえず雫ちゃんは胸おっきくて背が小さいのでよく痴漢されます。
でも雫は電車とかバスとかほぼ本読んでるのでされてることに気付きません(笑)
ちなみに運動神経ない彼女ですが…電車とか立ったままでも本は読めるという特技がある(笑)

菫くんは勘違いしたままですね。
多分そのうち誤解は解けますよ。うん(なんて無責任な)
 




 

そいつはぶすっとした顔で私にこう告げた。

 

「…………………・・Trick or Treat」

「は?」

 

 











 

 







 

 

 

 

「で?誰との賭けに負けたの?」

「アレッシオ。」

「まさか……ポーカーでもしたの?」

「…………」

沈黙ってことは肯定らしい。馬鹿なことをしたもんだ。

 

 

「あのねー、あの詐欺師にポーカーで勝とうなんてカルロには無理だって。多分ババ抜きでも勝てないわよ。」

「………ラウは勝てる。」

「……そりゃ…私は勝てるけど……カルロには無理だって。」

「…………」

 

 

 

「で?私にお菓子をせびるってのがその罰ゲーム?」

尋ねるとカルロはこくりと頷く。

多分これはすっごいマシなほうなんだろうなぁ……ってか何でこれ罰ゲームなの?絶対にお菓子あげないとか思われてるんだろうか……そこまでせこくないんだけど。

 

「…………ちなみに。一番酷い罰ゲームは?」

「女装して男をナンパ……。」

「ヴィーコ?」

「当然。」

「うわ……悲惨。まだ二コロだったら救いようもあったのに……そりゃオールしても無理でしょ。」


ヴィーコの女装姿を想像しただけで軽く気が遠くなりそうだ。

 

 

 


×××

「それじゃ…お菓子を上げないとねぇ」

ごそごそとポケットを探ってみるがお菓子らしきものは見当たらない。

ってかお菓子なんて持ち歩かないしなぁ。

 

「あ、じゃぁ食べかけでよかったら今舐めてる飴あげよーか?」


んべ、と舌の上に最初はもう少し大きかった飴を乗せて見せる。

 

 

「ラウ…………誘ってるのか?」

 

「………………捉え方は…お好きなように?」


微笑んだ瞬間にカルロの唇が私のに重なる。

 

 

そして2人して飴を舐めるかのように舌を絡め合う。

 

 

 

 

「ん……ぅ……ふ…ぁ……」

「っ……ぁ………」


ぴちゃくちゃと卑猥な音が部屋に響きわたる。

 

 


「ふぅ………ん……………ぁ……」


「カルロ………ほら………あげた……ん……だから…ちゃんと、舐め…………て」

飴ではなく私の舌ばかり追うカルロに軽くそういってやる。


しかし二人の舌の間で転がされた飴はもうビーズのような小ささになっており、どこにあるのかもよくわからない。

 

 


「ラウ…………あ…め。なくなったから……………」

「あぁ……じゃあお終い?」


「っ……!」

 


多分この先をしたいという意味で告げたであろう言葉を私は反対の意味で聞き返す。

そうするとカルロはぐっと押し黙ってしまった。


あー可愛いなぁ。

 

でもここで終わるっていうのはあんまりにもあんまりだから最後のチャンスをカルロに告げる。

 

「じゃぁ………さ。これ。」

そう言ってテーブルに置いてあった綺麗な紙に包まれ、手のひらに収まるような小さなチョコを取る。


そうしてまるでコインを投げるかのようにピンっとチョコを宙に弾く


そしてわからぬようにどちらかの手にそれを入れる。


と、いってもカルロの反射神経のよさならどっちの手にチョコが入っているかなんてわかっているんだろうけど

 

 


「さて、チョコはどっち?」


わかっているんでしょ?

という目でカルロに問う。


「……」

「当てたらTreatってことでカルロは無事お菓子をゲットできる。でも当てなかったら……私……Trick………されちゃうね?」

「………………」

 

 


クスっと笑いかけ、再度カルロに問う。

 

「さぁ…………Trick or Treat?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


×××
今考えてる新しい小説の主人公sです!
多分私だけが楽しいSSですいません!!
そのうち本編も描きますんで……すいません。




「恋の一雫」の番外編です。
番外編っていうか・・・・・・未来編?
違うのは菫くんと雫ちゃんがもう恋人同士っていう設定なだけです。
そこんとこ注意してください!!


















 

「トリック・オア・トリート?」

「へ?」

 

 

10月31日。

今日最初の会話だった。

 

 

 

 

「いや、だからトリック・オア・トリートだってば。」

「え?・……あ・あぁ…ハロウィン??」

「それ以外じゃ使わないでしょ。こんな理不尽な言葉。」

「り・理不尽??」

「いや、だってさ……要するにこれってお菓子くれなきゃ悪戯するぞってことでしょ?そんな自分勝手なって感じしない?」

「そ・そういわれてみれば………」

「あ―――――……でも、桜あたりなら普通に言いそうだ。」


「??」

 

 

 

 

×××

 

「で?お菓子、くれないの?」

「え?えぇ!?い……いまは・…持ち合わせが…ないんだけど」


まるでカツアゲされた子がいうようなセリフを雫は言う。

 

「じゃあ……悪戯だよね?」

にーっこり暗い笑みを浮かべて菫は笑った。

 

「えぅ……そ・そういうルールなら……しょうがない…よね。じゃ・じゃぁ……お手柔らかにお願いします!!」

そういって雫はぎゅっと目を瞑って菫に顔を差し出す。


「……え?」


焦ったのは菫である。

当然そういう意味で言ったので強ち雫の行動は自分の理にかなっているのではあるが、そういう方面ではからっきし鈍い雫をいつも通りからかって……という予定だったため、いざ準備万端で来られるというのも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…まぁ……末残食わぬは男の恥……とか流風さんも言ってたしな。

 

 

などと考えながらそっと雫の肩に手を添える。


「…………っ」

 

いつまでたっても初々しい反応を返してくれるなぁ……

 


そして頭を屈めあと数㎝で唇が触れあう………


「あ、菫くんっ!油性じゃなくて水性でお願いね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………は?」

 

 


「明日…一応学校あるし…だから油性じゃ落ちないから困るんだけど……」

「え…っと………」

「あ……でもでも、めちゃくちゃ頑張ってこすったら落ちるかもしれない……かな。」

「あの…………雫?」

「え…?」


「さっきから何の話してるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


×××


話をまとめるとこうである。

学校で夕姫が凪に同じようにハロウィン恒例のセリフを言って、お菓子を持っていなかった凪に対してマジックで顔に落書きされていたらしい。

それを見ていた雫は


イタズラ=顔に落書き


と思いこんでいたらしい。

 

「…………はぁ。」

こうなりゃもうムードもなにもあったもんじゃない。

とばかりに菫は溜息をついた

 


「雫ってさぁ………ホントに馬鹿だよね」


「え?えぇ??」

 

 

 

何がなんだかわかっていない雫は少し半泣きになりながら何で?何で??と菫のまわりをちょろちょろとしている。


そんな雫を腕の中に抱きこんでみる。

 

「へ?………あ・あの・………す・すみれくん??」


「………………」


「あ・あの………」

 

 


「ばーかばーか。」


「!?」

 

 

 


(まぁ……そこが可愛いんだけど。)

と思っているのは雫には内緒だ

 

 

 

 

◆◆◆

恋の一雫でハロウィンでした。
番外編ってことで恋人同士になった2人でお送りしましたー。

いや、だって本編だったらまだ2人知り合い程度なんだもんよ。

 

 


 




「ゆ・・・夢姉・・・??」

二人は茫然とその名を呟く。


「え・・・・・・あの・・・・・・?ゆーきちゃん?海原くん??」

いきなり顔を見合わせて黙りこんでしまった二人に雫は不安げに声をかける。


そんな雫を無視して二人はぼそぼそと小さな声で話す

 

 

「そんな・・・・・・まさか・・・夢姉が・・・あの人の・・・?」

「え・・・?で・でも夢姉って・・・恋人いた・・・よな?あの人じゃなくて・・・金髪の」

「う・・・うん・・・そのはずなんだけど・・・ってかなっちゃんがそれ聞いたんでしょ?」

「お・・・おぅ。あ!!じゃあきっとあの人とは・・・恋人とかじゃないんだな!!夢姉にかぎって二股とかするはずないし!!」

「そ・そうだよね!!」

「きっと偶然会って今散歩中とかそういうのだよね!!」

「おぅ!!!」

 


「あぁ!!!」

「「!?!?」」


いきなりの雫の大きな悲鳴に二人は会話を中断する。

「ど・どうした!?」

「あ・・・・・あれ・・・」


雫はぷるぷると指を震わせながら指さす。


その指の先の光景に思わず凪と夕姫は息を飲む


「夢姉・・・・・・泣いて・・・る?」

「よ・・・な?」

そこには夢という女性が静かに泣いていて、それをじっと見ている男の姿があった。

明らかに偶然会って今散歩中・・・という空気ではない。

 


「そんな・・・・・・あの人が本当の恋人なのかなぁ・・・?」

雫が半泣きになりながら夕姫に助けを乞うように目線を向ける


「いや・・・そんなはずは・・・・・・」

困っている夕姫の横で凪は雫の言葉が引っかかっていた。


「神館・・・・・・本当のって?」


「え・・・?だって・・・この前見た人はあの人じゃない・・・から」

「「な!?」」


「え?」


途端に二人の纏う空気が変わった


「って・・・・・ことは・・・あの人はいろんな女の人とお付き合いがあって・・・夢姉にも手を・・・・・・」

「その上夢姉を泣かせた・・・・・ってのか・・・?」

 

 

 


「あの・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「許せん!!」」

 


そう言って二人は背負っていた竹刀に手をかける。(自主トレのために持って帰ってきていた)

背後にはマンガでいうと『ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・』という効果音がついていた。

 

 

 


「え?ちょ・・・夕姫ちゃん!?海原くん!?!?な・なにするつもり!?!?」

 

「ごめんね・・・・・・しーちゃん。いくらあの人がしーちゃんの運命の人でも・・・夢姉を泣かせる人は許せないの。」

「ま、お前も変なのに引っかかる前に気付けてよかったなってことで・・・」

「ちょ・あの人はそんな人じゃないよ!!やめ・・・」

「しーちゃん。だって・・・夢姉を泣かせたんだよ?」

「え・・・あの・・・・」

「許せねーよなぁ?」

「ちょ・・・ま・・・」

 

 

 

 

 


「何が?」

 

 

「「「!?!?!?」」」


突然するはずのない声が聞こえ3人とも固まってしまう


「ってか・・・何してるの?あんたたち。」


「ゆ・・・夢姉!」

まさに今口論の対象であった二人が目の前に立っていた。

 

「あ・・・・・・」


雫は目の前の男性と目が合って思わず顔が赤くなるのを感じた。


「ゆ・・・夢姉・・・その・・・・・・・そちら・・・は?」

凪が男性を指さして尋ねる。

「こーら!人を指さしちゃダメって言ってるでしょ。」

ぽこっと夢は凪の頭を軽く叩く

「ご・・・ごめんなさい。」

「うむ、わかればよろしい。あ、この人は・・・菫くん、浅葱菫くんだよ。私お友達。」

「どうも。」

そう言って菫と紹介された男性は軽く頭を下げる。

「と・・・友達!?こ・恋人・・・じゃないよな!??」


「「・・・・・・・・・は?」」

意味わからないというような顔をして夢と菫は顔を合わせる。

 

「恋人って俺が??」

「ん??な・・・なんでそんなことに??」

「ってか夢さん・・・・・流風さんのこと・・・」

「あ、・・・あれ??な・凪には・・・言ったよね?龍牙のこと・・・。ほ・ほら、あの金髪のさ、」

「あ・・・う・うん。やっぱあの兄ちゃんが・・・恋人・・・なんだよな?」

「・・・・・・・・・・・・・」


途端に夢の回りの空気が冷たくなる。


「まぁ・・・・あの馬鹿が私の何なのかってのは置いといて、菫くんと私は普通の友達だけど?ってかなんでそういう話になるのよ。」

はぁ・・・と呆れたように夢が溜息をつく。

「だ・・・だって!!今夢姉その人に泣かされてたじゃない!!」

「わ・・・・・っ馬鹿!!」


夕姫の口を思わず凪がふさぐ。

まぁ、もう言葉にしていたため意味はないのだが。


「あ・・・・・あー・・・・見てたんだ・・・。ってかあれは・・・あ――――。」

「あれ・・・俺のせいですか?」

「え?いやいやいや。」

「まぁ・・・・・・どっちかっていうと桜のせいですけどね。」

「へ?なんでそこで桜くん??」

「あれ?まだ気づいてないんですか?あれ・・・桜ですよ?」

「・・・・・・・・・・は?」

「いや、だからあれ桜ですって。」

「え・・・いや・・・え・え・・・・・えぇ!?」

 

 

二人の会話がよくわからない三人は頭の上に?マークを浮かべる。

「あの・・・・・・夢姉?」

「え・・・あ、いや。な・なんでもない!!ってかさっきのは忘れて。ついでに菫くんは全然悪くないから!」

「そ・そうな・・・の?」

「そうなの!」

 

 

 

×××

「あの・・・夢さん。すごい今更なんですが、その子たちは?」

「あ、ごめんごめん。この子たちは私の幼馴染で・・・まぁ、弟と妹みたいなもの。こっちが海原凪。海の弟だよ」

「どうもっす。」

ぺこっと凪が頭を下げる。

「あぁ・・・海さんの。」

「そうそう。でも凪のほうが賢いよ」

にこっと笑ってさり気無く酷いことを言う

「で、こっちは春菜夕姫」

「こんにちは。」

夕姫も笑顔でぺこりと頭を下げる。

「で・・・・・・あれ?あなたは・・・・・・私もはじめましてだよね?」

「あ・・・・・は・はい!!こんにちは。私、神館雫と言います!!」

そう言って頭が膝につく勢いでお辞儀をする。


その雫をじっと見て菫が口を開く


「あ・・・・キミ・・・前もこの辺で会った・・・よね?」

「は・はい!!お・・覚えててくれたんですか!??!」

「え?あぁ・・・うん。何か面白かったし。」

「お・・・面白い・・・」

一瞬自分と同じような気持ちになってくれているのではないかと期待した雫は思わず肩を落とす。

まぁ・・・人生そんなにうまくいくはずもない。

 

「菫くんの知り合いだったんだ。」

「いや、知り合いってほどじゃ・・・・・・ほら、前に話しませんでした?自分の足に引っかかって転ぶ子。」

「あ・・・あぁ―――――。あの・・・怪談大会の時話してた・・・・・・」

その時の様子を思い出しているのか夢は少し顔が青くなる。

「か・・・怪談大会ですか??」

「あ、うぅん。いいのいいの。気にしないでね。」


夢は 慌てたように手をぶんぶんと振った。


「あーーーえっと、はじめまして。私は秋原夢って言います。貴方のことは夕姫から何回か聞いたことあるの、いつも夕姫と凪と仲良くしてくれてありがとうね。」

そう言って夢は雫に笑いかける。

「あ・・・い・いえっ!!」

雫は何だか気恥しくなって思わず俯く。

そんな彼女の耳元で夢はこそっと呟いた。

「ちなみに、本当に私と菫くんは何でもないから。頑張ってね?」

「!?!?」

がばっと真っ赤な顔をして夢を見つめる。

そんな雫を見て夢はにっこりと笑った。

 


「さて、もう日も暮れて来たし、そろそろ帰りましょうか。」

「そうですね。」

「あ、菫くん。悪いんだけど雫ちゃんのこと家まで送って行ってくれる?」

「え?」

「・・・・・・・・・・え??」

菫は少し怪訝そうな顔をして夢を見る。

「ほらこんな時間になるとさぁ・・・変な人とか出てきそうでしょ?こっちの世界も今何かと物騒だから。この2人はどうせ家に近いから私が送るし。そうなると、この子が1人になっちゃうじゃない?」

「はぁ・・・・・・まぁいいですけど。」

「ほんと?ならお願いね!」

とんとんと夢は話を進めていく。

当の雫は未だに状況がよく掴めてないのかぽかんとしている。


「じゃあ、またね~。」

「あ・・・え・・・?えーっと・・・・・・ば・ばいばい!しーちゃん!!」

「あーーーー・・・じゃぁな?」

そう言って夢、凪、夕姫はさっさと帰ってしまう。

残された2人は・・・・・・・・・


「えーっと・・・じゃあ帰りましょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」


「あの・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・雫さん?」

「ふぁ・・・ふぁい!!」

ぽんと肩を叩かれビクリと大袈裟なほどに雫は飛び上がる。

「え・・・・?」

「あ、す・すいませんっ!!え・・・と・・・じゃ・じゃあ・・・・・・・おねがいしますっ!!」


「はぁ、じゃあ行きましょう。」

「は・はい!!」

そうして2人は歩きだした。

 




×××

「夢姉~」

「ん?」

「なんでわかったんだ?神館があの人のこと好きだって。」

「え!?夢姉わかってたの!?!?」

「いや、わかってなきゃ、あんなこと言うわけねーじゃん。」

「いや~だってあんなに真っ赤な顔で好き好きオーラ出まくりで菫くんのこと見てたら・・・・・・わかるっしょ?」

「そんなもんかなぁ」

「そんなもんだって。」

(じゃあ何で海の気持ちには気付かなかったんだろう。)


「しーちゃんたち、今どーなってるかなぁ??」

 

 


×××

その頃・・・


「あの、右手と右足同時に出てますけど。」

「・・・ふぇ?」

 

 

 

◆◆◆
とりあえず今回はこの辺で。
やっと2人が出会うとこまできました!!次はもうちょっと進展・・・・・・するかなぁ?(おい)

あ、ちなみに夢さんはいわずもがな、サイトの「許恋」に出てくるヒロインさんです。
自分に対する好意に対しては鈍いんですが、他人に関しては結構鋭いです。
あとあの剣道部コンビは夢姉大好きっこですいません(笑)
とりあえず夢を泣かせる=悪い人という方程式が出来上がります。

あと、夢が泣いていた原因ですが・・・・・・それはまた書きます。
ちなみに他には龍と桜ともしかしたら准が出る予定。
まぁ、気長に待ってみてください。
 

追記
誤字があったので修正しました(汗)すいません。



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